【特集】15年前の日本ブームを追ってみた — ダナン
- 宜生 玉田

- 11月7日
- 読了時間: 4分
― 成功と停滞の間で見えてきた「構造的変化」 ―

2000年代後半から2010年代にかけて、中部ベトナム・ダナンは日本市場で急速に注目を集めた。当時、HISの澤田会長が全社員の前で「年間10万人を送客する」と宣言したエピソードは象徴的だ。日本の旅行業界全体がベトナム中部を“次の観光成長地域”として位置づけ、官民一体の取り組みが進められていた。

この時期、旅行会社や航空会社、地方政府、ホテル、レストラン、イベント運営会社が密接に連携し、企画・教育・販売・受入までの一貫した仕組みを築いた。特に日本語ガイドの育成や、現地側の教育設計、観光資源のブランディングといった「基盤づくり」に重点が置かれたのが特徴である。中部ベトナムの観光ブランドが現在の形に発展した背景には、こうした地道な連携の積み重ねがあった。



■名物の策定と「衛生の壁」
中部を代表する三大名物が整理されたのもこの頃だ。一方で、すべての食文化が日本市場に適応できたわけではない。たとえば「コムヘン(シジミご飯)」は現地では高い人気を誇るが、日本人旅行者には衛生面の課題が大きく、商品化には至らなかった。また、当時は赤痢や硬水などによる体調不良も多く見られ、医療機関の対応を含めた改善が求められた。近年では一定の衛生改善が進んでいるが、旅行者にとって「安全な食文化の提供」は依然として重要なテーマである。
■観光からITへ——価値創出の次なるステージ
観光業の拡大と並行して、IT分野でも中部地域の存在感が高まった。現地企業は、日本の大手メーカーやグローバル企業の基幹システム、労務管理、製品開発支援など、多様な案件を受託し、ベトナムの技術力を世界に示した。一部のプロジェクトは現在も稼働しており、観光に次ぐ“新たな輸出産業”としてのポテンシャルを証明した時期だったといえる。
しかし近年では、開発事業が過剰に収益性へと傾き、短期的な成果を重視する傾向が強まっている。構造的には、現代の邦画産業が「出演者のフォロワー数」から収益を逆算し、似たような作品を量産してしまう構図に近い。本来、社会的波及効果や教育的投資といった“インタンジブル資産(無形資産)”こそ、持続的成長を支える要素である。それがコスト削減の対象となり、投資と創造のバランスが崩れ始めたのが、約10年前だったのかもしれない。


■再び「熱」を取り戻すために
コロナ禍を経て、日本人旅行者は他国に流れ、企業の新規投資やも控え気味になっている。だが一方で、観光・教育・ITの融合は今後のダナンにとって大きな可能性を秘めている。無形の価値を積み重ね、再び中部ベトナムに「熱」を取り戻すこと——それが次の時代の鍵となるだろう。
■中小企業がとるべき次の一手
大手企業の守りが固くなり、大きなしわ寄せをはらむ中小企業も自らの戦略を見直す時期にある。危機感はあるものの、逆に言えば新たな価値を生むチャンスでもある。
注目すべきは、ローカルのニーズが高く、模倣が難しく、社会的波及効果のある分野だ。
地域特有の課題や文化、生活習慣に基づいた仕様を実装することで、日本企業が苦手とする“ローカル発のグローバル展開”も可能になる。
AI爆速の渦中、この数年で、中小企業は自らの優先順位を再定義し、戦略的に舵を切る必要がある。地場発の知恵と技術を活かして、持続的な価値を生む——それが、次の時代を生き抜くための現実的かつ前向きな道筋である。
■注目の取り組み
弊社でもIT分野におけるローカルマーケットの大きな可能性を無視できない。さらに、興行分野でも少しずつ動き始めている。伊藤雅之 スーパーフェザー級WWB世界王者も注目しており、ベトナムでの興行・旅行事業、SNSの新たな活用など多方面で活動中だ。現在、スポンサーを絶賛募集中で、事業や活動に関わる機会は大きな注目ポイントとなっている。
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