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フエ王朝の磁器とは何なのか

  • 執筆者の写真: 宜生 玉田
    宜生 玉田
  • 3月12日
  • 読了時間: 6分

**時を超える陶器の物語:阮朝時代の日本からフエへ贈られた「有田焼き」の秘密**

DAINOI(フエ王宮)内閣府
DAINOI(フエ王宮)内閣府

阮朝時代(1802-1945)のベトナム、特に歴史的な都市フエには、ある興味深い物語があります。それは日本から輸入された美しい陶器、特に「有田焼き」と、中国からの磁器(ポーセリン)にまつわるものです。この磁器(ポーセリン)は陸路と海路を越え、遠くの日本や中国からフエの王宮へと届けられました。そのプロセスは単なる貿易の一環ではなく、文化交流の重要な側面を成していました。


当時、フエは阮朝の首都であり、豪華な宮廷文化が栄えていました。そこに集まる富と権力を象徴するかのように、磁器(ポーセリン)はただのインテリアにとどまらず、貴族の地位や感性を示す重要な役割を果たしていました。このような背景の中、日本の有田焼きはその精緻なデザインや優れた品質から特に王宮で重宝される存在になったのです。


有田焼は佐賀県の有田町で生産される磁器(ポーセリン)で、17世紀に始まったとされます。伊万里焼はその一部として広く流通しましたが、伊万里という名前は主に港の名前であり、実際にはさまざまなスタイルの陶器が含まれています。フエで有田焼が選ばれた可能性として以下の点が考えられます。

有田焼
有田焼

まず、有田焼はそのデザインと技術的な完成度から、王族や貴族に特に人気がありました。また、当時の流通網の中で、有田焼はより多くの輸出先を持ち、さらに品質チェックが厳格だったため、破損するリスクが少なかったのです。これらの要素により、王宮に供給される際に、伊万里焼よりも安定した品揃えが期待できたのかもしれません。


朱印船による日本からホイアンへの輸送は、当時の技術と商業の結晶であり、多くの商人たちがこの航路を通じて繁栄を享受しました。しかし、長い航海においては、厳しい天候や波風、さらには船の揺れにより陶器が破損するリスクが常に存在していました。特に、有田焼はその繊細なデザインゆえに、特に注意が必要でした。そのため、輸送中に破損したり、運搬に適さなくなった有田焼の一部は、やむを得ず海に捨てられることもあったのです。これは貿易の一環として想定されていたリスクであり、商人たちはこのような損失を考慮に入れて利益を見込んでいました。


一方、中国からの磁器(ポーセリン)は、特に福建省や広東省、景徳鎮などの産地から輸入されていました。これらの地域は、肥沃な土壌と豊富なカオリンがあり、高品質な磁器(ポーセリン)の原料が得られるため、古くから世界的に評価される磁器(ポーセリン)の生産地として知られていました。

景徳鎮
景徳鎮

 朱印船貿易当時、有田磁器は、海上での激しい波や、陸路での運搬中の振動も、陶器にとって脅威でした。実際、年間70,000点から140,000点に及ぶ有田焼きが、航海や陸路の途中で破損し、姿を消してしまったのです。まるで海や陸がその美しさを受け入れることを拒んでいるかのように。


磁器(ポーセリン)を作る技術は非常に高い技術を必要とします。まず、磁器(ポーセリン)の基本材料であるカオリン、長石、石英などの選定が重要です。特にカオリンは、純度が高く、理想的な成分比が求められ、吟味されたものが使用されます。これらの材料は、焼成時に最適な温度で化学的に反応し、光沢と強度を持った製品へと変化します。


次に、成形の過程では、型を使用して緻密なデザインを施すための熟練した技術が求められます。職人は、直接手で操作する場合もあれば、高度な機械を使用する場合もあり、どちらの場合でも高い精度が必要です。特に有田焼においては、デザインの細部が後の釉薬や絵付けに大きな影響を与えるため、慎重な作業が求められます。


焼成の段階でもさらに高い技術が要求されます。磁器(ポーセリン)は通常、1200℃以上の高温で焼成されますが、この焼成温度を厳密に管理する必要があります。温度が高すぎると製品が変形する恐れがあり、逆に低すぎるとしっかりとした強度が得られません。また、焼成後の冷却プロセスにも特別な注意が必要で、急激な温度変化は割れを引き起こす可能性があります。このため、焼成炉の設計と運用も重要な要素となります。

近代の有田磁器 焼成炉
近代の有田磁器 焼成炉


その後、磁器(ポーセリン)は釉薬で仕上げられ、特に美しい外観を施されることが多いです。この釉薬もまた、科学的な知識と工夫が求められ、色合いや質感を創り出すためには熟練の技術が必要です。調合ミスがあると、希望通りの仕上がりにならないことがあるため、職人は試行錯誤を重ねて理想的な釉薬を追求します。

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磁器(ポーセリン)と陶器の違いには、主に原料と焼成温度があります。磁器(ポーセリン)は高温で焼成されるために非常に硬く、透明感や光沢を持っています。一方、陶器は一般的に低温で焼成され、通常は陶土を使用しているため、比較的柔らかく、釉薬の種類によってさまざまなテクスチャと色合いを持っています。また、磁器(ポーセリン)は水分をほとんど吸収せず、食器としての機能に非常に優れていますが、陶器は吸水性があるため、使用目的に制限があることが多いです。古代の人々は、これらの違いを厳格に区別しており、それぞれに異なる用途と価値を認めていました。磁器(ポーセリン)は貴族や上流階級の使用品として尊重され、陶器は一般の家庭や日常生活における重要な道具として広く利用されました。


しかし、フエの魅力はその破損した磁器(ポーセリン)の行方にあります。すべての壊れた陶器が捨てられるわけではなく、王宮や帝廟の装飾用に再利用されることが多かったのです。磁器(ポーセリン)の欠片は、もはや陶器としての価値を失ったとしても、王族や貴族の目にはその装飾的美しさが強烈に映ります。壊れた磁器(ポーセリン)は巧みな手によって修復され、壁画や床の装飾として新たな命を与えられました。この文化的慣習は、破損したものに対する新たな価値の生み出し方を示しています。


さらに、フエは日本と中国、さらには他の東南アジア諸国との文化交流の拠点でもありました。この陶器を通じて、様々な芸術や思想が行き交い、相互に影響を与え合ったのです。有田焼きは、日本の高度な技術と美的感性が詰まった産物であり、中国の磁器(ポーセリン)はその古代からの技術と洗練されたデザインが結集したものでした。この流れ込みは単に物質的な交易を超え、両国の文化的な絆を深めていったのです。


このように、フエの歴史を彩る有田焼きと中国の磁器(ポーセリン)の物語は、ただの陶器ではなく、文化の交差点で生まれた美の結晶として、私たちに過去の人々の思いを語りかけます。失われたものの中に新しい形を見出し、代々受け継がれる文化の深さを感じ取ることができるのです。


さて、あなたもこの不思議な磁器(ポーセリン)の物語を訪れてみませんか?それは、時を超えた贈り物であり、歴史の中で静かに語り続ける美しい声なのです。

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