ダナンローカルビジネス爆上げ コロナ禍のコーヒー屋さん
- 宜生 玉田
- 2022年8月22日
- 読了時間: 6分
更新日:2022年8月30日
■前置き
2022年8月時点ベトナム国内では二度とロックダウンを行わないとコミット宣言が首相から発表されている。
日本からの直接投資の冷え込み背景として、情勢景気が不安定な東南アジアへの投資ではなく米国への一点集中化の傾向が見られる事と、昨今国際情勢による材料高騰から価格転嫁のしがらみ、そして資金繰りDIの低下から国内企業内同士での併統合が背景にある。
ベトナム国内では相次いで外資によるベトナム国内大手の事業買収の傾向が見られる。
例えば FOODYというベトナム食品ECサイトなどがそうだ。シンガポールだけでなくタイのコングロマリットによる買収も活発だ。
体力のあるベトナム国内中小企業は海外からの新しいサービスまた製品を国内マーケットへのはめ込みフェーズが既に始まっている。
また、同時にマーケットリサーチ文化が無いベトナムでは、お金を持って事業拡大意思があるにも関わらず、何をどうやって誰に対して行うのか模索している事業主も少なくはない。
外国資本や事業請負に大きく依存してきたベトナムでは大きな転換期に入っている。
2023年に入ると、投資依存してきた国内の最大手企業がバタバタ倒れていくと想像しても杞憂ではない。
サービスが画一化する中、国内のワンブランド1店舗のみで運営する、とあるコーヒーショップが目についた。
■コロナ禍で売り上げ5倍の小さなコーヒーショップ
ベトナムを代表する大手チェーンのハイランズコーヒー(HighLands Coffee シンガポール系)・スターバックスまたカフェカップ(Cafe Cup韓国系)・日本へも進出しているコンカフェ(Cong Cafe)と異なり、18席程のミラノカフェFC店舗のうちの一事業者。
市内からは2㎞程離れ、コーヒー一杯15,000ドン(88.3円)ファシリティはどちらかというと郊外の地元の人間だけが利用するような家賃3万円程のよく見るような小さな突貫店舗だ。
専用機で豆を粗びきしブレンドするコーヒーの事を現地語で”カフェマイ”と呼ぶ。

筆者自体もよく利用させてもらっている店舗で、雰囲気や場所は兎も角、このカフェマイの
味わいやローストの香りは抜群だと昔から感じていた店舗になる。
実際席に座る客層は労働者になる。 コロナ禍この店舗は月に60万円を超える売り上げを叩き出しているのである。
コロナロックダウン時では店舗内での飲食は禁止の為、10割がデリバリーサービスによる売り上げとなる。
では、他の小規模事業主も同じ業績を叩き出したのではないかとと問われると答えはNoだ。
このミラノFC店舗の3m先反対側に同じような規模のもっとしっかりしたデザインのこーひーショップでは、同時期に閑古鳥状態であったからだ。
■BMIから仮説設定
ベトナムのビッグマック指数は69,000ドン(2021)、ホーチミンとダナンの食品物価比率が27.5%なので仮にダナン市コーヒーショップの単価標本平均を29,000ドン(※個人事業主単価平均は含まない)とする。
ミラノ店舗でコーヒーの売り上げが多店舗より多いという前提の話にする為に(ややこしくなるので)簡単なヒアリングを元に、期待度数を推測してみた。
ミラノカフェ : 200/60 コーヒー/他ドリンク注文数/日
カフェカップ : 80/20 コーヒー/他ドリンク注文数/日
(単位:杯 2021年時ロックダウン時)これを観測値として仮説を行う。
■何故コロナ禍で売り上げを爆上げできたのか?
当のオーナーは絶対的な味や風味の違いだと言っていた。
確かにそれもあるだろう。
コロナ前はブランドコーヒー屋に通い、快適さや場所にお金を払っていたコンシューマーが店舗で飲食出来なくなったのだから、店舗の雰囲気どうこうよりも安くて美味しいコーヒーを飲むことがロックダウン時の楽しみとなるからである。
それを象徴したかのように、ハイブランドチェーンのデリバリーが機能していても、多くのユーザー層は小さな片隅の個人経営店に朝から晩までオーダーが絶えず偏りがうかがえた。
■ミラノFC店とハイブランドコーヒーの事業整理と標本検体
〇ミラノ店の場合(オールインワン方式 仕入れ~配送まで):

価格帯:88.3円/カフェマイ
席数:18
テナント:3万円/月
管理者1
マイスターや配膳1
宅配業務4
(人件費:自給)
突貫アンケート:
美味しい10 安い10
※店舗事業主によって業態も味も異なります
グラブ(Grab)と言われるシェアリングエコノミーサービスの一つグラブエクスプレス(Grab Express)に登録すると売上の3割(価格帯による)が手数料として差し引かれる為、扱う製品にとっては致命傷となり、グラブ離れもすすんでいる。
そこでこの店舗は近隣エリアにマーケットを絞り、特定エリアに自力で配送するノウハウを得た。
〇ハイランズコーヒー(仕入れから製品化まで):

価格帯:170.9円/カフェフィン(ダナン市はハノイ・ホーチミンより3割安)
席数:50
テナント:推定30万円/月
オペレーション1
管理者1
マイスター2
宅配業務0
(人件費一部固定給)
宅配業務はすべてエコノミーシェアサービスに依存
突貫アンケート:
美味しい6 心地よい8
■適正価格
適正価格をマーケットから算出するのか、固定費やランニングコストから算出するのかで価格に大きな違いが出た。
ミラノは区単位での労働者の評判を得て、区外の中流ボリュームゾーンへ広めた
いわば既存マーケットに入り込んだ新興マーケットとして実績をつけた。
ハイランズはリゾートビーチ目の前という利点を生かしたいわば、ロケーションマーケットに依存している為、固定費が高い。またグラブ等のエクスプレスサービスでは売り上げ手数料が掛かる上に更にPOSシステムと連結していることが多く、売り上げに対しVATといわれる税金が重くのしかかった事で、出費エネルギーの方が大きくマラソン途中で息切れし稼働日数が減少した事が要因と考えられる。
■1杯ではなく家族単位での発注
核家族傾向にあるベトナムは、特にコロナ禍ロックダウン時は4‐5杯同時に発注する事が多かった。
当然そうなると金額も馬鹿にならない為、安価で質の良い製品ニーズが爆増した。
■ピンチ時に弱い自給率とブランド
カフェマイとはコーヒー豆の粗びきであることは先述した。仕入れ先はベトナム国内またはカンボジア・ラオスからで、国内の生産者から直接仕入れる事が多い。
一方、ハイランズコーヒーだけでなくその他ハイブランドチェーンではカフェフィンと言われる材料を使用することがある。
カフェフィンとは既に加工されたコーヒー粉をベンダーから仕入れるものである。周知の通りチェーン店の特性の一つに大量に仕入れる事で原材料価格を極限に下げる特性がある。“味が変わったな”という事はそういうことである。更にベトナムで原材料を大量に安定して購買する事は近隣諸国の主に中国からの仕入れ価格に依存する事となる。コロナ禍では強い交通規制はあったものの、国内のみ食品・物や製品・材料や機材の配送は可能であった。
その為、輸入に強い制限がかかった場合のFCチェーンは弱い。
■コロナ禍で分かったことの収穫として、コンシューマーは富裕層であろうがなかろうが、美味しいものが売れる事を自ら証明した事になるかもしれない。
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